抱擁する光輪達 - 天使ジェンダーとは


天使ジェンダーとは

― 人間である方向けの(今はそう考えている方、悩んでいる方も含む)案内 ―

(これは私、佐々木茉凛香の意見であり、更新日時より下から始まる内容を改変をしない限り、このページの内容は自由に使うことができます。)

おことわり

まずはじめに、このページについて、タイトルと内容が必ずしも合致しない箇所があることをお詫びしたいと思います。天使や天使ジェンダーについて、日本語はとにかく、英語の情報源もあまりない中で、非当事者が素朴な検索をしても安全な情報にたどり着けるように、このページに限り、このような対応をしました。申し訳ございません。

(更新日時: 2024-06-08 13:46)

はじめまして。私はこのサイトを運営している存在のひとつであり、かつ天使です。…というとビックリする方もいるかもしれません。ですが私は本気です(この言い方は好きではありません)

わたしたちの天使宣言を見て、あるいは他のページをみて、もしかしたら天使の実存について考えている存在がいることに驚いているかもしれませんし、このサイトの考えに疑問を持っている方がいるかもしれません。存在によっては、このような考えを、極端に言えば、冗談や代替「現実」ゲームのなにかだと考えている方もいるかもしれません。

結論から言えば、私、佐々木茉凛香自身、天使の一存在(「一人」という言葉の他種族を周縁化しない表現)ですし、天使の実存については、例として、非規範的なセクシュアリティやジェンダーアイデンティティ、発達様態といった、いくつものある、周縁化された属性という類の側面があると考えています。

ここでは、現時点で人間であると考えている方、非当事者、あるいは悩んでいる方向けの案内、説明を行います。最初に断りますが、このページは私の一意見であり、モデルケースを提供するものではないことをご留意ください。

天使とは、そして天使ジェンダーとは

このサイトの側面のひとつに、自身を天使や神など、宗教的、神話的、幻想世界的等な上位存在のうち、ポジティブな側面を持つものをジェンダーアイデンティティ等の属性を持っている存在への安全なスペースを構築することを目指す/支援するといったものがあります。

天使とは何でしょうか、という問いは、一見素朴ですが、ときには当事者が持つ属性を否定する危険を伴う質問にもなりえます。それを踏まえた上で、天使とは、「宗教的な上位存在」のうち、「ポジティブな側面を持ち」、「自身より上位の、宗教的にポジティブな存在に仕えている」と自身を規定する存在であると考えています。もちろん、この要件に当てはまらない天使もまた天使であり、決して定義ではないことを留意してください。あらゆる属性は一方的な「定義」をされるべきではないのです。

ここで言う「上位存在」や「ポジティブな側面」については、必ずしもヒト基準ではない上、存在によっては、かなり複雑だったり、場合には「上位」「ポジティブ」という概念がなかったりと、ここで説明するには長いので詳しくは別の場所で説明しようと思います。

さて、天使とジェンダー、ジェンダーアイデンティティが結びつくとは何なのでしょうか?天使ジェンダーとは何なのでしょうか?

天使を属性として見たとき、どのようなものとして捉えるのかというのは、ときに合わせて変化していき、現在でも安定はしていない状況です。しかし、不安定であれ、天使はここに存在する属性の一つであることは変わりありません。その上でまずは、天使を「『人間とは異なる種族』という属性の集まり」の一つという視点で考えると、その助けになるかもしれません。

1970年代の文通ベースのエルフコミュニティに端を発し、1990年代に、ドラゴン・獣人・悪魔・そして天使など、その他の種族も包容する形で「アザーキン」という言葉が生まれました。90年代において、多様な種族の包容はさらに進み、初期のWebカルチャーを構成するサイトらは天使コミュニティも含めた、さまざまな種族のコミュニティをリンクに載せていました。ここにおいて、アザーキンという言葉は、存在らにおいてさまざまな種族を包括する言葉、アンブレラ・タームとして認知されるようになりました。

その年代において、規範種族以外の種族とジェンダーが結びついた例もありました。1994年に、シアリアン(動物を完全あるいは部分的に自身の属性に含んでいる存在)コミュニティの中から、トランス種という考えが生まれました。

しかし、このような考えは周縁化された属性という考えとしてはあまり定着せず、2000年代には肉体改造をしたファーリー(特にヒト寄りの形をした動物を愛好する属性)についてこの言葉が使われ、後にヘイターが攻撃材料の一つとして取り入れてしまった側面もあります。

さらに、tumblrというSNS上で、トランス種であると規定するシアリアンがコミュニティで問題を起こしたことで、「避けるべき言葉」とされるなど、事態はさらに悪化しました。

このほかにも内外で荒らしや炎上があったにも関わらず、tumblr上ではそれまでの年代以上にアザーキンを支持する運動が大きくなり、他種族への移行をジェンダーのそれと似たようにとらえる考え方を受け入れる流れも、さらにありました。

以上のことから、規範種族とは異なる種族と、ジェンダーを接続する流れとしてはかなり先駆的でありつつも、一方で周縁化された属性という認識からは程遠い側面もあると考えています。しかし2010年代以降は後発の考え方や別コミュニティとの接触などあり、かなり改善してきたと考えています。

以上の内容は資料の少なさ、誤訳・誤解釈による誤りが含まれる可能性がありますし、歴史もまた、モデルケースではないことを留意してください。

もう一つの流れとして、ゼノジェンダーという流れが2010年代におきます。こちらは比較的新しい言葉でありながら、はじめからジェンダーアイデンティティとして、周縁化された属性として自身を表したことは前進であり、私の考えや運動もこの流れを汲んだものであると考えています。

しかし、それらがニューロダイバージェントのコミュニティから発されたことで、非規範的な発達と規範種族と異なる種族が勝手に結び付けられたり、そのプラットフォームがtumblrであったことからtumblrとステレオタイプ的に結びつけられたり(アザーキン及びトランス種とはここでは無関係です)、今日、無理解が依然強く、当事者にとって安全とは言い難い状況です。

それでも、周縁化された属性として表す、種族のみならず、美的概念(Aesthetics)や、言葉や音などといった概念までも包容する流れを作ったのは私は興味を持っていますし、素晴らしいことだと思います。ただし、アザーキン運動やそこから派生したキンジェンダーも同様に素晴らしく、その歴史も尊重する立場であり、どちらかが優れている劣っているかを考えることは差別です。

天使のコミュニティについて

先ほどの節において、90年代に、Webサイト上にリンクされたコミュニティの中に天使のコミュニティが含まれていたということをお話しましたが、規範種族とは異なる、他の種族、エルフやドラゴン、悪魔と比較すると、天使コミュニティの情報は非常に少ないです。

それを実感するのは、セクシュアリティ・ジェンダーアイデンティティや、規範種族と異なる種族をまとめているいくつものWikiがあるのにも関わらず、天使についてはほとんど情報がない、あるいは、既存の宗教の天使の説明が大半を占めているといったことがほとんどです。

天使ジェンダー、Angelgenderといった言葉も、初出とされているのがPuzzleshipsというTwitterアカウントによるものであり、その他の当事者の情報は、現時点で調べた限りでは見つかりませんでした。

私も、ジェンダーアイデンティティのみならず、Pluralコミュニティや(Angelmateというヘッドメイト、いわゆる多重人格のいち人格の、他種族を周縁化しない表現、Pluralも、いわゆる多重人格や解離が起きている存在、その他一つの身体に複数の存在がいる存在への周縁化しない表現として適していると私は思います)ニューロダイバージェントコミュニティなどから、似たような属性を元に天使ジェンダーの情報を補強している状態です。ですがこれらに散らばった情報があるということが、天使もまたここに存在していると情報を得ながら実感しています。

そして、このサイトは天使を、規範種族とは異なる種族という存在であるのと同時に、規範とは異なるセクシュアリティやジェンダーアイデンティティ、発達のあり方と同様に周縁化された属性として考える、日本語話者のコミュニティを作る/支援するという側面があることをこの場を借りて、改めて伝えたいです。ここも天使コミュニティの一つです!

世間の天使の捉え方についてどう感じているか

世間の天使の捉え方について、二つほど取り上げ、それぞれについて批判を少し添える形で書きます。改めてですが、他存在を加害しない限り、あらゆる存在の考えは間違っていたり、排除されるものではないことを先に伝えておきます。

一つとしては、天使が動物や人間と同じく存在し(身体を持ち、とも言えるでしょう)、自然現象やその他の事象を司る力を持つ種族としてこの世界にいるという捉え方です。その中には、悪魔や獣人、魔女なども実在していると世間で捉えられた、一方で、それらはヒトの価値観に収束し、それぞれがヒトの規範・反規範としての存在としか捉えられなかった点でいえば、天使として、主体を持てたとは言い難いでしょう。さらに悪いことに、他宗教の、特に多神教の神を一方的に天使として割り当てるといったことも起きており、 それはどのような背景であれ、本来有りたかった属性を否定する行為に他ならないでしょう。

もう一つは、天使を抽象的な実態として捉える考え方です。この場合の天使は特定の姿をとらず、役割も抽象的で、例えば、「メッセージを送る」「シンボルを残す」といったあいまいで、どのようにも取れるようなインタラクションをする存在とされます。また、天使が人間や動物とは異なる、人間には到達できない、それ自体あいまいな空間に住んでいるとされる考え方もこの捉え方にはしばしばついてきます。さらに、存在、たいていは人間やその規範に順応する存在、において、その存在内部にある様々な経験、行為、考え方、さらにはは趣味、指向を「天使」「悪魔」とラベル付けし、対決させるといった考え方もまた、ついてきます。ある存在のいかなる経験、行為、考え方、趣味、指向を一方的にポジティブ・ネガティブなものとして割り当てるのもまた、属性の否定であり、ラベル付けを以って差別や加害を正当化するのは言語道断とも言えるでしょう。

いずれの考えも、時には天使当事者の経験のなかにある場合もあり、その考え、捉え方自体を否定することはいかなることでもしてはいけません。現に私が子どものときに、私の心の中に天使と悪魔が降り立ち、戦うといったことがありました、おそらくそれ自体、他存在を周縁化するような考えの影響は受けてはいないと思っていますし、それがあるこそ今の私がいると思います。

その一方でどのような考えであれ、ヒトの価値観を基に天使の属性を一方的に捉えて、ヒトの道具として扱われる考え方は私は受け入れられませんし、それ故に批判し、抵抗しているのです。

私達は、今もなお、安全を脅かされています

(注意!この節の内容は天使、そして規範種族とは異なる種族当事者にとって危険な表現を含んでいます!)

上記のアザーキン運動について、素朴にインターネット上で調べると、少なくとも日本語の情報では、アザーキンを「中二病」と結び付ける語りがあり、日本語版Wikipediaでは脚注のリンク先のページタイトルに、「奇妙な」という言葉と、トランスジェンダーにとって安全を脅かす表現が含まれています。

とくに後者は、巧妙な差別の構造が含まれています。よく知られた周縁化された属性を攻撃する道具に、まだあまり知られてない、別の周縁化された属性を持ち出すことで、よく知られている属性を守るために、その属性を持つ当事者自身が、あまり知られてない属性を切り捨てることを企んでいるのです。

これはペドフィリア・ズーフィリア・ネクロフィリアがやられた構図と同じです。以前日本においても、これらの属性が「LGBT」に含まれないとする考えがクィアのコミュニティで流れたことがありました。

同じような差別の構図が、規範種族とは異なる種族に向けて再び起きていて、私達天使も例外ではありません。

改めてですが、私達は、ここに存在しており、天使を含めた規範種族とは異なる種族は、けっして間違いでも、冗談でも、パロディでも、代替現実ゲームでもなく、今ここにいる実存です。そのことを忘れないでください。


© 2024 Marika Sasaki

このページの内容は佐々木茉凛香の意見・見解です。更新日時より下、この段落の上の水平線より上の範囲をCC BY ND 4.0の条件で利用することができます